実際に必要なDAWソフトや機材を揃えたら早速曲作りに取り掛かりたいところです。しかし「いざ曲作り」といってもDAWの使い方が分からないという方も少なくないはず。そこで今回はDAWの基本的な使い方、作曲の概念などについて分かりやすく解説していきます。
前回の記事でも説明しているように、DAWにはソフト音源が付属されているものが殆どです。昨今のDTMは殆どの場合DAWで作曲します。したがってここからはDAWの使い方についてご紹介します。
曲作りの前に必要な準備 _DAWのセッティング方法について
まず曲作りをする前に準備をする必要があります。「また準備が必要なの?」と思うかもしれませんが、ここからの準備とはDAW側のセッティングです。具体的にどのような準備が必要か見ていきましょう。
ソフトウェアのインストール
当然ながらソフトウェアのインストールが必要です。前述のように基本的にDAWにはソフト音源が付属されています。DAWアプリケーションと共にそれらをすべてインストールする必要があります。またオーディオインターフェースにもソフトウェアが付いている場合は、それもインストールしましょう。
全てのソフトウェアをインストールするにはある程度の時間が必要です。焦らず説明書を確認しながら確実にインストールしましょう。
MIDI機器のデバイス設定
インストール後DAWアプリケーションを開いたら環境設定などからMIDI機器のDAWとの関連付け・設定をする必要があります。USB接続されたオーディオインターフェースを通して、オーディオインターフェースにMIDI接続された音源等を使用する場合はこの設定が必要です。
その他MIDIキーボードなどのコントローラーの操作具合 (ピッチベンドなど) の設定やドラムマップ (ドラムパートの編集) など、細かな設定もできます。具体的な設定方法はDAWに付いている説明書を確認しましょう。
オーディオのデバイス設定
オーディオデバイス設定とはオーディオデータを取り扱う際の設定のことで、DAWとオーディオインターフェース間の操作性を調整します。再生・録音に関する設定はDAWにおいて重要です。必須の知識となる為ここでマスターしておきましょう。設定するのは主に以下の項目です。
①オーディオインターフェースの設定
複数のオーディオインターフェースを接続している場合は再生・録音にどのオーディオインターフェースを使用するのかを選択します。
②ミキシングレイテンシ (再生バッファ数・バッファサイズ)
オーディオ・ドライバとのデータ送受信時に用意するバッファ数を指定します。値を小さくするほどレイテンシ (詳細は前回の記事参照) が短くなりますが、音切れやドロップアウトが発生する可能性があります。
ドロップアウトとは再生中に再生が止まってしまうことです。これは再生するプロジェクト (曲) のデータが重い場合、パソコンの再生能力を超えてしまう為に起こる現象です。パソコンのスペックが低い場合などはバッファサイズを大きくすることで防ぐことができますが、バッファ数が大きいとレイテンシが大きくなります。使用環境を踏まえて適切な数値に設定しましょう。
③サンプリングレート
ボーカルや生楽器を録音する際のサンプリングレート (周波数) のことです。使用されるのは主に44.1kHz・48kHz・96kHz・192kHzがあり、値が大きいほど高音質になりますが、データ量も多くなります。
CDの周波数は44.1kHzです。したがってどの周波数でレコーディングしても一般的に視聴できるデモ音源にする場合は最終的に44.1khzにします。
上記以外の細かな設定など、自身のレコーディング環境に合わせて設定しましょう。
DAW_作曲について
DAWのセッティングが完了したら、いよいよ作曲開始です。実際に作曲に入る前にまずは作曲とはどういうものか、DAWにおける作曲の概念を説明します。
レコーディングとは
まずはレコーディングの概念から確認していきましょう。レコーディングと聞くと、ミュージシャンがスタジオに入ってレコーディングするのを想像するのではないでしょうか。バンドであればバンドメンバーがスタジオに入って一斉に録音するイメージがあるかもしれません。
しかし実際には必ずしも一斉に演奏してそれを録音するというわけではありません。むしろそういったケースは多くはないといえるでしょう。通常はパート毎に個別にレコーディングします。
また基本的には一曲を通して演奏するわけではなく、「サビだけ、イントロだけ」のようにそれぞれのセクションを個別にレコーディングしていきます。最終的にそれら個別にレコーディングされたものをまとめて(Mix) して市場で聞ける状態 (マスターテープ) にします。DAWでの作曲においてもこの概念が重要です。
トラックとは?
DAWでの作曲において、トラックの概念を認識しておくことが重要です。トラックとはそれぞれのパートを別々のレコーディングする為の「場所」のようなものです。
先述のようにレコーディングはパート別にレコーディングして最後にまとめると説明しました。DAWとはこの工程をパソコンでできるようにしたものです。いわばDAWはバーチャルなコンソールといえます。コンソールとはレコーディングスタジオに設置されている大きなミキサーです。大きなコンソールが入っているDAWによって自宅をホームスタジオにできるわけです。
具体的には、例えばボーカル・ギター・キーボード・ベース・ドラムの5つのパートがあったとします。ボーカルは1トラック、ギターは2トラックというようにレコーディングし、最終的にそれらを一斉に再生することでバンドアンサンブルができあがるわけです。
レコーディングしながら作曲する
作曲の方法はジャンルやミュージシャンそれぞれによって異なりますが、DAWにおいては基本的にレコーディングしながら作曲していきます。これはDAWの大きなメリットともいえます。思いついたメロディーを即座にカタチにできるのがDAWの魅力です。
DAW_作曲の流れについて
ここからはDAWでの作曲 (レコーディング) における基本的な流れについてわかりやすく説明していきます。
プロジェクトを作成する
プロジェクト (DAWソフトによって名称は異なる) というのは曲の作成・編集単位のことで、基本的に「1曲=1プロジェクト」です。プロジェクトの作成時に、どれくらいのトラック数にするかなどをあらかじめ大まかに決めて作曲する際の土台を決めます。
パート (使用する音色) が多ければ当然ながらトラック数もその分必要となります。トラックはオーディオレコーディング用・MIDIレコーディング用の2つがあり、プロジェクトの際に決まっていれば、どのトラックをどれくらい使うかを想定してプロジェクトを作成するとよいでしょう。
トラックは途中からも追加できますが、DAWによっては最大トラック数に制限が設けられているものもあります。
曲のコンセプトを決める
曲のキーやテンポ (BPM)、リズム (シャッフルや3/4拍子など) を予め決めておきましょう。全てのパートが打込みの場合はレコーディング後でもキー・テンポは変更できますが、ボーカルやギターなどオーディオデータの場合、レコーディング後にキー・テンポを変えるのは困難です。
それぞれのパートにレコーディングする
準備ができたらいざレコーディングです。レコーディング方法はMIDIとオーディオで若干異なります。
MIDIレコーディングの場合
MIDIトラックをレコーディングする場合はまず楽器 (音色) の割り当てから行います。好きな楽器を音源から選んだら、メトロノームを流しながらレコーディングしていきます。具体的な設定方法はDAWソフト毎に異なりますので、説明書を確認するようにしましょう。
基本的にはMIDIキーボードなどでプレイしながらレコーディングしますが、MIDIレコーディングの場合それ以外にも、データを直接入力する方法もあります。またレコーディング後に音色を変えるなどの編集も可能です。詳細に関しては別の記事で詳しく解説していきます。
オーディオレコーディングの場合
オーディオレコーディングの際は、オーディオインターフェースのどのチャンネルを使うのかに合わせてDAW側を設定する必要があります。それと共にオーディオインターフェース側のセッティングも必要です。
例えばコンデンサーマイクを使ったボーカルのレコーディングにはファンタム電源をOnにする必要があります。オーディオレコーディングの詳細についても次回以降の記事で詳しく解説します。
具体的なセッティング方法はそれぞれお使いのDAWの説明書を確認するようにしましょう。
MIDIレコーディングと異なり、レコーディング後にキーやテンポ、音色を変えるのは困難です。ミステイクや大掛かりな編集が必要な場合などの際は録り直す必要があります。
まとめ
今回はDAWの設定、レコーディングの概念などについてご紹介してきました。特にミキシングレイテンシなどの細かいセッティングは、初めは難しいかもしれませんが、DAWで作曲・編集を行う上で必要な知識となります。今回の記事を参考にお使いのDAWのセッティングを熟知しておくようにしましょう。